フランシス・バレット(Francis Barrett)の生涯についてはほとんど全く知られていない。解っているのはその著作の年代から、十八世紀後半〜十九世紀前半のイングランドの魔術研究家であるということだけである。
 
 バレットが今日まで名を残しているのは、1801年に出版された『秘術師』(Magus)という著作によってである。著書の見開きに載せられた彼の肖像の下には、著者紹介として以下のような文言が記されている。

フランシス・バレット
化学、形而上学、自然哲学、隠秘哲学、
...の学徒


 とはいえ、『秘術師』の内容はそれ程哲学的なものではない。当時の最新のグリモアの集大成といったところである。しかしそれ故にこの書が非常に意義のあるものであるともいえる。
 つまり、後にエリファス・レヴィによって隠秘哲学が確立される前に、それまでの妖術的技法を纏め上げたという功績である。
 以下に『秘術師』の目次の内容を示す。翻訳には Aquarian Press 1989年版を用いた。
  
目次
広告 1
導入 3
星辰の影響 3
占星学の用途と乱用 4
神に対する式辞 9
一般的な自然魔術 10
自然魔術の最初の原理 13



第一の書

第一部
第1章 定義された自然魔術。神の創生、神の表象、降臨、そして魂の神秘的で魔術的な美徳

13

第2章 自然魔術の驚異。類感的・神秘的な操作によって顕示され、種々雑多な取り扱いを受けている、動物、鉱物、植物について

24

蛇について

28

第3章 護符、美貌と魅惑について。血の流動に対するお守り

30

第4章 香湯、媚薬、薬

32

第5章 不思議な浮遊と混合法について。自然魔術のどのような力がそれらに効果があるのかの開示

34

第6章 反感について

35

第7章 生命の中にだけ内在し、死後も残存する物質の神秘的な効能について

37

第8章 ある種の貴重な石の持つ素晴らしい効能について

39

第9章 自然物の多様な混合物と、怪物の製造について

41

第10章 自然魔術の結論。魅了、呪縛、妖術、不思議なキャンデー、蝋燭、光などの技術

44

錬金術
賢者の石の秘密

51

ムサイオスへの手紙

53

読者の手紙

55

錬金術と、その神の起源について

56

ウリエルに発見された人間

56

ゾロアスターは七つの金属から金を製造した

56

ゾロアスターは錬金術師の父である

56

それについて書いた著者たち

56

錬金術師の比較

57

どんな達人がいるのか

57

ファン・ヘルモントの錬金術の評価

58

キルヒャーの錬金術師の評価

58

賢者の石の説明

58

真の変成の報告

59

錬金術師フラメルの評価

59

バトラーの万能薬の歴史

59

一般に黒魔術の緩用は普遍的に理解されない

63

賢者の石の探索の資格を得る必要な準備について

64

第一物質について

64

卑金属の金への変成を教える十教程

64

教程十一、十二、十三、十四。ラピス・フィロソフラムから第一物質を抜き出す方法。そしてその用途、それは不完全な金属を清め、良い金に変えること。

68

第二部
第1章 四大元素とその実際の特徴について

73

第2章 火と土の特性と素晴らしい本質について

75

第3章 水と空気について

77

第4章 複合、または混合した肉体について。どんな方法がそれらの要素に関係するのか。そしてどのようにその要素が人間の魂、感覚や性質と対応するのか

81

第5章 元素が星と悪魔と人の性質の内にあること

83

第6章 第二の原因による神の賢明さによる仕事がこの章で明らかに証明される

85

第7章 世界霊について

87

第8章 自然物の上に印章と記号が天界から刻まれる

88

第9章 香りの特性と効能について。そしてどんな惑星にそれらが帰されるのか

89

第10章 惑星に帰された香りの構成について

92

惑星の一般的な香気

93

第11章 音の不思議な特性について

94

第12章 精神的熱情が天界によって援助されること。そしてすべての仕事にどのくらい確固とした精神が必要か。

96

第13章 どのようにして人間精神が天界の魂と知性に結び付き、下位物質の上に素晴らしい美徳を刻み付けるのか。

97

第14章 数学の知識の必要性について。そして護符やその他のものにおける構造数の顕著な力と効能について。

99

第15章 自然の中の超自然物としての数の顕著な特性

102

第16章 数の尺度、原一の段階

103

第17章 第二の数とその段階

104

第18章 第三の数とその段階

106

第19章 第四の数とその段階

108

第20章 第五の数とその段階

114

第21章 第六の数とその段階

115

第22章 第七の数とその段階

117

第23章 第8の数とその段階

128

第24章 第九の数とその段階

130

第25章 第十の数とその段階

132

第26章 第十一、十二の数と二十までの段階

136

第27章 ヘブライ人とカルデア人の符号そして魔術師によって使われた他の記号について

140

第28章 惑星の不思議な配列の様式と特徴、そこに現れる神の名前と知性と霊性

142

第29章 全ての不思議な業に必要な天界の監視について

148

第30章 惑星が最も強力であるとき

149

第31章 名前と本質で確定した星の観察

150

第32章 太陽と月、その不思議な考察

152

第33章 月の二十八宿とその特徴

153

第34章 表象、印章その他同様のものとしての人工物の様式が、天上物質から特徴を導きだす

157

第35章 黄道十二宮の表象について。どんな特徴が星に刻まれているのか

158

第36章 七惑星の表象。土星の表象

159

第37章 木星の表象

160

第38章 火星の表象

161

第39章 太陽の表象

162

第40章 金星の表象

162

第41章 水星の表象

163

第42章 月の表象

164

第43章 竜座の頭と尾の表象

164

第44章 月の二十八宿の表象

165

第45章 人間の呪いの力が外部のものに影響すること。そして依存度を通して、どの位人間精神がより高められた魂と知性を好むか

168

第46章 護符魔術の結論。その主題に表されたすべてのキーを含む、表象の実践と護符の構成の例示、そして、同様に、完璧なる護符操作に際しての必要な天界の必需品についての考察

172

第二の書

第一部
磁気作用

3

第1章 磁気的あるいは吸引的な能力

4

第2章 交感薬について

8

第3章 磁気的あるいは交感的軟膏について。交感、アーマリー、軟膏の力。傷の治療、法悦、ミイラなど。

9

第4章 攻撃膏薬について

12

第5章 想像的な力について、そして自然霊、ミイラの吸引力、アストラル体の交感の磁気力。そしてその上に成立する降霊術の全ての技術。

13

第6章 特殊な妖術

18

第7章 活動的魂について

20

第8章 魔術的力やその他のもの

22

第9章 魔術的特質の喚起あるいは呼び出しについて

24

第10章 魂の魔術的な特質と媒介による行為について

27

第11章 磁気作用の結論

29

カバラ魔術
第1章 カバラについて

33

第2章 真の魔術師になるためにはどのような品格と準備が必要か

34

第3章 魔術師には真の神の知識が必要である

35

第4章 神の流出について、十のセフィロトとそれらを支配し解釈する神の十の最も神聖な名前。

35

第5章 神の名前の力と特質について

39

第6章 知性と霊について。そしてその3倍の種類と、異なった名前について。そして地獄、地下の霊について

42

第7章 悪霊の序列について。彼らの堕天と異なる世界

46

第8章 悪霊の弊害と善霊から得られるもの

49

第9章 人間の三倍の数の管理者の存在とそれがどこから生じたか

52

第10章 彼ら自身のなかでそして我々に語られる天使の言語

53

第11章 霊の名前と、その様々な役割について。そして星、サイン、天の端、元素の上に据えられる霊について。

55

第12章 カバリストは聖書からどのくらい天使の名前に近づいたか。そして神の名前を生み出した七十二の天使について。ジルフの表と、名前と数の変換

58

第13章 天界の性質から霊と精霊の名前を見つけ出すことについて

60

第14章 カバリストの伝統によるそのような名前の計算方法について

61

第15章 霊の記号と印章

64

第16章 カバリストの伝統に従った記号作成の別の方法

64

第17章 啓示によって得られた霊の別の記号

66

第18章 霊の証書と彼らの宣誓と除霊

67

第19章 魔術師と降霊術師はどんな方法で死者の魂を呼び出すか

68

第20章 預言的夢について

70

第二部
カバラあるいは儀式魔術の完成と鍵

73

善霊と悪霊の数の計算

74

五芒星の作成方法

80

敵に勝利する五芒星

81

蛇、毒に効く五芒星

82

祈願

83

この技術に使わる全ての魔術道具と材料の聖別

85

水の聖別

86

火の聖別

87

香油の聖別

87

燈明の聖別と祝福

87

ランプ、蝋、その他

87

地面、サークル、場所の聖別

88

霊を呪縛や喚起する呪文について

89

霊の名前が記載される未使用の羊皮紙、あるいは仔牛皮紙の本の記述と用途

90

上記の本の聖別

91

特殊な善霊の呪文

92

術者の呪文

93

哀悼詩の特殊な形式

94

夢で神託を受け取ることについて

96

魔法円により、悪霊、死者の霊を呼び出す方法

99

亡霊、影と過去の霊の呼び出しに使われる副次的聖別。そしてそれを行うにはどんな場所が適切か

101

第三部
魔方円の特別な構成。週の全ての日と時刻に於ける悪魔祓い、祝福と召喚の様式について及び十分な説明の方法

105

日中、夜間の各時刻での魔法名の一覧

107

各季節の天使とその他

108

火の悪魔祓い

109

エクソシストの気質

109

ソロモンの五芒星

109

空気の精霊のエクソシズム

111

サークルの四ヶ所で唱えられるべき祈祷

113

式辞

114

週の各曜日の考察と召喚

114

霊の出現

114

日曜の考慮すべき事項と召喚

117

月曜の召喚とその他

118

火曜の召喚とその他

119

水曜の召喚とその他

121

木曜の召喚とその他

123

金曜の召喚とその他

125

土曜の召喚とその他

126

第四部
トリテミウスの翻訳。翻訳者の手紙

131

水晶への霊の召喚。道具の説明、洞察の様式と儀式

134

昼夜の惑星の時間を統治する霊の名前の検索表

138

秘術師あるいは天界の通信者についての結論

139

人物伝
オラマサスの息子ゾロアスター

144

ヘルメス、トリスメギストスの異名

150

テュアナのアポロニウス

152

ピーター・デ・アバノ

155

プラトン学派のアプレイウス

158

アリストテレス

162

バビロニア人たち

166

ハインリッヒ・コルネリウス・アグリッパ

168

アルヴェルトゥス・マグヌス

170

ロジャー(別名フライアー)・ベーコン

180

ライムンドゥス・ルルス

181

ジョージ・リプレー

184

ジョン&アイザック・ホランド

186

テオフラテス・パラケルスス

188

ジョン・ルドルフ・グローバー

194

ディー博士とエドワード・ケリー

195

結論

197